【専門家が解説】障害年金の不支給が増加しています【現状と対策】
目次
令和6年度は、障害年金の新規裁定における「非該当」の割合が前年度より上昇しました。ただし、すべての請求が一律に厳しくなったとはいえません。公的調査の内容を正しく理解し、ご自身の状態が書類へ適切に反映されるよう準備することが大切です。
障害年金の不支給が増えているという情報を見て、「今から請求しても認められないのではないか」と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
厚生労働省と日本年金機構が公表した資料では、令和6年度の新規裁定における非該当の割合が、令和5年度より上昇したことが確認されています。その後、不支給事案の点検や認定業務の見直しも進められています。
この記事では、グロースリンク社会保険労務士法人が、公的調査から分かったことと、障害年金を請求する前に確認したいポイントを解説します。
令和6年度は障害年金の「非該当」が13.0%に上昇
令和6年度の新規裁定では、決定件数14万6,225件のうち、非該当は1万8,982件、割合は13.0%でした。
| 年度 | 新規裁定の決定件数 | 非該当件数 | 非該当割合 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 14万2,209件 | 1万1,947件 | 8.4% |
| 令和6年度 | 14万6,225件 | 1万8,982件 | 13.0% |
割合は4.6ポイント上昇し、令和5年度の約1.55倍となりました。公的な業務統計からも、令和6年度に非該当が増えたことは確認できます。
ここで注意したいのは、公的統計で使われる「非該当」と、一般に使われる「不支給」が必ずしも同じ意味ではないことです。非該当は、障害の程度が認定基準に該当しないと判断されたものを指します。初診日や保険料納付要件など、別の理由で支給に至らない場合もあります。
不支給割合の上昇について公的調査で分かったこと
厚生労働省の調査では、特に精神障害の新規裁定で、等級判定の目安より下位の等級に認定され、非該当となったケースなどが増えていたとされています。
精神障害や知的障害では、診断書に記載された「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」から、障害等級の目安が示されます。ただし、目安だけで等級が自動的に決まるわけではありません。
実際の認定では、現在の病状、療養状況、生活環境、就労状況なども含めて総合的に判断されます。そのため、目安と異なる等級になることもあります。
調査では、診断書などに疑問点がある場合に医師へ照会するなど、認定基準に定められた手順を外れていた事実は確認されませんでした。一方で、審査書類に判断理由が十分記載されていないものや、不支給理由の説明が分かりにくいものが見受けられたとされています。
したがって、「認定基準が突然変更された」「どのような状態でも認められにくくなった」と捉えるのは正確ではありません。個別の障害状態と提出書類をもとに審査される点は変わらないため、必要な方が報道だけを理由に請求を諦める必要はありません。
不支給事案の点検と認定業務の見直しも進められています
令和6年度以降の不支給事案について点検が行われ、支給へ変更された事案も公表されています。
日本年金機構が公表した令和8年3月31日時点の速報値では、1万4,841件の不支給事案を点検し、444件、約3.0%が支給となりました。令和6年度以降の不支給事案の点検は完了したとされています。
ただし、この数字は点検対象となった事案の結果です。すべての障害年金請求について3.0%の判断誤りがあったことを意味するものではありません。
厚生労働省は、認定の客観性と公平性を高めるため、審査体制の見直しも示しています。令和8年10月以降、体制を整えながら、不支給や支給停止などの不利益処分となる事案を複数の認定医による審査の対象とし、判断が分かれる事案などは認定審査委員会で判定する方針です。
令和8年8月6日時点では、今後実施される予定の取り組みも含まれます。最新の運用状況は、請求時に日本年金機構の案内を確認することが大切です。
障害年金の請求で最初に確認したい3つの要件
障害年金は、主に「初診日」「保険料納付」「障害の程度」の3つを確認して請求を進めます。
- 初診日要件:障害の原因となった病気やけがで、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を確認できること
- 保険料納付要件:初診日の前日において、原則として所定の保険料納付要件を満たしていること
- 障害状態要件:障害認定日またはその後の請求時点で、法令上の障害等級に該当する程度の状態にあること
病名が付いていることや、障害者手帳を持っていることだけで、障害年金の支給が決まるわけではありません。また、働いていることだけを理由に、直ちに対象外になるわけでもありません。
初診日に加入していた年金制度、保険料の納付状況、診断書に記載される障害状態などを個別に確認する必要があります。制度の基本から確認したい場合は、障害年金とは?もあわせてご覧ください。
不支給を避けるために請求前に確認したい5つのポイント
重要なのは、症状を重く見せることではなく、これまでの経過と日常生活への支障を、事実に沿って書類へ反映することです。
1.初診日と受診歴を早めに整理する
初診日は、受けられる障害年金の種類や保険料納付要件、障害認定日の基準となる重要な日です。現在の医療機関より前に別の医療機関を受診している場合は、初診時の医療機関がどこかを確認します。
初診から長い期間が経過していると、カルテが残っていないこともあります。受診した医療機関、受診時期、転院の経緯をできる範囲で早めに整理しましょう。
2.発病から現在までの経過を時系列でまとめる
病歴・就労状況等申立書には、発病から初診、通院、治療、就労、休職、退職、現在の生活までを、期間が空かないように記載します。
単に「つらかった」「何もできなかった」と記載するだけでは、具体的な状況が伝わりにくいことがあります。いつ、どのような症状があり、生活や仕事にどのような支障が生じ、誰からどのような援助を受けていたかを整理することが大切です。
3.診察室では伝わりにくい日常生活の状況を整理する
特に精神障害の診断書では、日常生活能力に関する情報が重要です。次の7項目について、調子の悪い日だけでなく、日常的な状態を振り返ります。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達および対人関係
- 身辺の安全保持および危機対応
- 社会性
「できるかどうか」だけでなく、自発的にできるのか、促しや見守りが必要か、家族の代行が必要か、できた後に大きく体調を崩すかといった点も確認します。
4.就労状況と職場で受けている配慮を具体化する
働いている場合は、勤務時間や収入だけで判断されるわけではありません。仕事の内容、欠勤・早退の状況、職場での援助、業務量の調整、対人業務の免除、障害者雇用かどうかなども、総合評価で考慮される要素です。
「働いている」とだけ伝えるのではなく、どのような配慮があるから就労を継続できているのか、家庭生活ではどの程度の援助が必要なのかを、事実に沿って整理します。
5.診断書と申立書の内容に食い違いがないか確認する
診断書は医師が作成し、病歴・就労状況等申立書は請求する方の側から生活状況を補足する書類です。それぞれの役割は異なりますが、受診歴、就労状況、生活上の支障などに大きな食い違いがあると、確認が必要になることがあります。
診断書の内容を本人の希望に合わせてもらうのではなく、医師へ日常生活の状況を正確に伝えることが大切です。提出前には、日付や事実関係の誤り、記載漏れがないかを確認しましょう。
不支給の通知を受けたときは理由を確認することが重要です
不支給となった場合も、すぐに同じ内容で請求し直すのではなく、決定理由と提出書類を確認して対応を検討します。
不支給となる理由は、障害の程度が等級に該当しない、初診日を確認できない、保険料納付要件を満たさないなど、事案によって異なります。
決定に納得できない場合には、審査請求などの不服申立てを検討できることがあります。一方、現在の障害状態や提出時期によっては、再度の裁定請求を検討する場合もあります。どの方法が適切かは、不支給理由、決定時点の状態、現在の状態、提出済みの資料などによって変わります。
不服申立てには期限があります。通知を受け取ったら保管し、早めに年金事務所や障害年金を扱う社会保険労務士へ相談することをおすすめします。当法人のサポート料金と審査請求サポートもご確認いただけます。
障害年金の不支給増加に関するよくある質問
不支給割合が上がっているため、今は請求を待った方がよいですか?
報道や年度別の割合だけを理由に、請求を一律に待つ必要はありません。障害年金は個別の要件と障害状態をもとに判断されます。請求時期によって診断書の対象期間や受給開始時期が変わることもあるため、迷う場合は早めに確認しましょう。
精神障害は病名が重ければ障害年金を受け取れますか?
病名だけでは決まりません。症状、治療経過、日常生活能力、生活環境、就労状況などを踏まえて総合的に判断されます。同じ病名でも、支援の必要性や生活への影響によって判断が異なる可能性があります。
働いていると障害年金は不支給になりますか?
働いていることだけで直ちに不支給となるわけではありません。仕事内容、勤務状況、職場の配慮、援助の内容、就労の安定性、日常生活の状況などが考慮されます。実際の働き方を具体的に整理することが大切です。
過去に不支給となった人は、点検によって必ず再審査されますか?
公表された点検には対象範囲があり、過去のすべての不支給決定が同じ条件で自動的に変更されるわけではありません。ご自身の決定が点検対象か分からない場合や、決定内容に疑問がある場合は、通知書を用意して個別に確認しましょう。
請求前に社会保険労務士へ相談するメリットは何ですか?
初診日や保険料納付要件の確認、必要書類の整理、診断書を依頼する前の生活状況の整理、申立書の作成などについて助言を受けられます。ただし、社会保険労務士へ依頼しても支給が保証されるものではありません。
まとめ:数字だけで諦めず、ご自身の状況に合った準備を進めましょう
令和6年度は、障害年金の新規裁定における非該当割合が8.4%から13.0%へ上昇しました。その後、不支給事案の点検や審査体制の見直しが進められています。
大切なのは、不支給割合の数字だけを見て請求を諦めることではありません。初診日、保険料納付要件、障害状態を確認し、診断書や申立書へ実際の経過と生活状況を正確に反映することが重要です。

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