年金を払っていないんだけど、障害年金ってもらえるの?【専門の社労士が徹底解説!】
こんにちは!
グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。
「年金保険料を払っていない時期があるんだけど、障害年金はもらえるの?」決して安くない国民年金保険料。
確かに、国民年金保険料の支払いが厳しくて滞納してしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、年金保険料を払っていない時期があっても、一定の条件をクリアしていれば障害年金を受給することは可能です。ただし、この「保険料納付要件」というハードルを越えることができなければ、どんなに重い障害があっても障害年金は1円ももらえません。
今回は、年金保険料の未納がある方でも障害年金を受給する可能性について、専門の社労士が詳しく解説していきます。
障害年金の保険料納付要件とは?
障害年金を受給するためには、病気やケガの程度だけでなく「保険料納付要件」という条件を満たしている必要があります。これは、「きちんと保険料を納めていた人でなければ障害年金は支給しませんよ」という制度設計になっているからです。
保険料納付要件は、初診日の前日において以下のいずれかの条件を満たしていることが必要です。初診日とは、その病気やケガで初めて医師の診察を受けた日のことを指します。
障害年金の保険料納付要件は次の通りです。
原則的な要件: 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
特例要件: 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
厚生年金の場合は、会社に雇用されている期間は自動的に保険料が給与から天引きされるため、原則として未納ということがありません。そのため、65歳未満の方であれば、初診日の前々月までの1年間に厚生年金に加入していれば、自動的に保険料納付要件をクリアできることになります。
なぜ「初診日の前日」で判断するの?
「なぜ初診日当日ではなく、前日で判断するの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
これは、病院で診断を受けてから慌てて過去の未納保険料を後払いすることを防ぐためです。もし初診日当日で判断してしまえば、診断を受けた後に大急ぎで未納分を支払って要件をクリアしようとする人が出てきてしまいます。そうなると、きちんと保険料を納めていた人との公平性が保てなくなってしまうのです。
そのため、初診日の前日の時点で要件を満たしているかどうかを判断することで、制度の公平性を保っているということになります。
年金保険料を払っていない時期があっても、以下のような場合には障害年金を受給できる可能性があります。20歳前に初診日がある場合(先天性の疾患など)は、年金制度にまだ加入していない時期のため、保険料納付要件は問われません。ただし、この場合は所得制限があります。
保険料を納められない場合の対策
年金保険料をどうしても納付できないという場合には、そのまま未納にしておくのは非常に危険です。万が一の事故や病気で障害の状態になっても、障害年金を受給できなくなってしまいます。
免除手続きを活用しよう
年金保険料の支払いが困難な場合は、必ず免除手続きを行いましょう。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除など、所得に応じて様々な免除制度があります。
免除手続きを受けていれば、たとえ保険料を支払わなくても、障害年金の保険料納付要件の計算においては「納付済期間」として扱われます。つまり、未納期間としてカウントされないということです。
免除手続きは、市役所や年金事務所で行うことができます。手続きには年金手帳やマイナンバーカードなどが必要になります。
学生の方は学生納付猶予特例を
20歳以上の大学生の方は国民年金の被保険者となり、保険料を支払う義務が発生します。しかし、まだ収入がない学生の方にとっての保険料負担は、決して軽いものではありません。
学生の方が保険料を未納にしたままだと、学生中に発症した病気やケガで重い障害になった場合でも障害年金を受け取ることができません。また、卒業後に就職して厚生年金に加入しても、就職から1年未満で発症した病気については障害年金を受給できない可能性があります。
そこで、「学生納付猶予特例」という制度を利用してください。これは、学生期間中は国民年金保険料の支払いを猶予し、卒業後に収入を得られるようになったら遡って支払うという制度です。
この手続きを行っておけば、学生期間中に発症した病気や就職して1年未満に発症した病気によって重い障害になった場合でも、障害年金を受給することができます。
要件を満たしているかわからない場合は?
「自分の場合、保険料納付要件を満たしているのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。年金記録は複雑で、転職や結婚による住所変更などで記録が分散していることもよくあります。
年金記録の確認方法
まずは、ご自身の年金記録を正確に把握することが大切です。年金記録は以下の方法で確認できます。
「ねんきんネット」にアクセスして、インターネット上で24時間いつでも確認することができます。また、年金事務所に直接出向いて確認することも可能です。最寄りの年金事務所で「年金加入期間確認通知書」を発行してもらえば、詳細な加入状況がわかります。
複雑なケースは専門家に相談を
年金記録が複雑で、要件を満たしているかどうか判断が難しい場合は、障害年金の専門家である社労士に相談することをおすすめします。
転職を繰り返していて、厚生年金と国民年金の加入期間が混在している場合や、結婚や離婚により第3号被保険者の期間がある場合、学生時代の取り扱いが複雑な場合、過去に免除手続きを行ったかどうか記憶があいまいな場合などはどうしても専門的な視点からの確認が必要になります。
まとめ
年金保険料を払っていない時期があっても、保険料納付要件をクリアしていれば障害年金を受給することは可能です。
まず、初診日の前日時点で要件を満たしている必要があること。次に、全体の3分の2以上の納付・免除、または直近1年間の未納なしという条件のいずれかをクリアすること。そして、保険料の支払いが困難な場合は必ず免除手続きを行うこと。以上必ずご確認ください。
現在、障害年金の不支給が増加しているという報道もありますが、適切な準備と専門知識があれば受給の可能性は十分にあります。まずはご自身の年金記録を確認し、わからないことがあれば専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では、障害年金に関する相談を無料で行っております。年金記録の確認から申請書類の作成まで、トータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。