5年まとめてもらえるってホント?注意点を解説します【専門の社労士が徹底解説!】
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こんにちは!
グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。
今回は、障害年金の遡及請求(さかのぼり請求)についてお話しします。障害年金は過去にさかのぼって受給できる制度があり、条件を満たせば数百万円という高額の年金を一度に受け取ることができます。しかし「5年さかのぼれる」という情報だけで判断すると、後々後悔することになってしまいます。実は、さかのぼるためには細かい条件があり、それらをすべてクリアする必要があるのです。
この記事では、遡及請求の具体的な条件と注意点について、詳しく解説していきます。障害年金について相談したいという方も、ぜひ最後までご覧ください。
障害年金の請求方法は3つある
障害年金の請求方法は、「障害認定日」を基準として3つに分かれています。どの方法で請求するかによって、用意する書類や受給できる金額が大きく変わってきます。自分にどの請求方法が適しているのかを理解することが、手続きを進める上で非常に重要になります。
障害認定日について
障害認定日とは、障害の状態を定める日のことです。具体的には、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6ヶ月が経過した日のことをいいます。また、1年6ヶ月以内にその病気やけがが治った場合(医学的に症状が固定した場合)は、その治った日が障害認定日となります。ただし、20歳前に初診日がある場合は、20歳に達した日が障害認定日となることがあります。
3つの請求方法を詳しく解説
①障害認定日請求
障害認定日請求とは、初診日から1年6ヶ月経過した障害認定日時点で、法令に定める障害の状態にある場合に、その認定日から1年以内に請求する方法です。この方法で請求する場合は、障害認定日から3ヶ月以内に作成された診断書が必要となります。そして、障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。
②事後重症請求
事後重症請求とは、障害認定日には症状が比較的軽く障害の状態が法令の基準に達していなかったけれど、その後症状が悪化して法令に定める障害の状態に至ったときに請求する方法です。この方法では、現在(請求日)時点の診断書が必要となり、請求日の翌月分から年金を受け取ることができます。
事後重症請求は、障害の状態が悪化した場合以外にも選択されます。例えば、障害認定日時点に医療機関を受診していない場合や、その時点のカルテが医療機関によって廃棄されている場合、あるいは障害認定日時点の医療機関が既に閉院している場合などです。このように障害認定日の診断書を用意できないときは、事後重症請求を選択することになります。
③遡及請求
遡及請求とは、何らかの理由で障害認定日から1年以上経過してしまったにもかかわらず、その後になって障害認定日時点にさかのぼって請求する方法です。「何らかの理由」には、障害認定日時点では障害年金が請求できることを知らなかったケースや、症状が重くて手続きを進める状態ではなかったケースなどが考えられます。遡及請求で認められた場合は、障害認定日にさかのぼって受給権が発生することになります。
遡及請求では、障害認定日から3ヶ月以内の診断書と現在(請求日)の診断書の2枚が必要です。そして、重要なポイントとして時効により、受け取ることができる期間は最大で過去5年分に限定されるということです。
5年という時効をしっかり理解する
障害年金には時効があります。過去にさかのぼって年金を受給できる期間は最大5年が限度なのです。つまり、5年を超えてさかのぼって遡及請求を行ったとしても、過去5年分しか支給されないということになります。
具体例を挙げて説明しましょう。8年前にさかのぼって遡及請求を行った結果、障害基礎年金2級に認定されたと仮定します。障害基礎年金2級の支給金額は年間約80万円ですから、過去5年分として受け取る年金額は約400万円(80万円×5年)ということになります。一方、過去3年分は時効により消滅してしまい、失われる年金額は約240万円(80万円×3年)になってしまうのです。
遡及請求は、請求が遅れれば遅れるほど、その分本来もらえるはずだった年金が時効により消滅してしまいます。条件を満たす場合は、できるだけ早めに請求することが非常に重要です。
遡及請求が認められやすいケースと難しいケース
遡及請求が認められやすいケース
検査数値や見た目で障害状態が明らかであったり、いつ症状が固定したかがわかりやすい傷病は、遡及請求が認められやすい傾向があります。例えば、人工関節の挿入置換、人工弁や心臓ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器)の装着、手足の切断などが該当します。これらは医学的な根拠が明確であるため、審査において判断がしやすいのです。なお、原則通り1年半経過した日の方が早く到来する場合はこの限りではありません。
精神疾患の場合は、障害認定日に通院していており、現在まで引き続き安定した就労ができていない場合に、認められる可能性が高くなる傾向があります。ただし、精神疾患の遡及請求については、より詳細な検討が必要になってきます。
遡及請求が困難なケース
糖尿病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、パーキンソン病など、症状が徐々に進行するような疾患は、初診日の証明が難しくなることがあります。また、精神疾患の方で何十年も前に初診があるような病歴が非常に長い方の場合も、初診日の証明が難しいケースが多いです。
遡及請求を行うための5つの条件
遡及請求をするためには、以下の5つの条件をすべて満たす必要があります。どれか1つでも欠けてしまうと、遡及請求が認められる可能性は大きく低下してしまいます。
条件1:障害認定日に障害等級に該当していること
障害認定日において、障害年金の基準に定める程度の障害状態でなければ遡及請求は認められません。障害等級は1級から3級(3級は厚生年金のみ)に分かれており、それぞれ以下のような基準があります。
1級は、他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方、あるいは入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が1級に相当します。
2級は、必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方、あるいは入院や在宅で活動の範囲が病院内や家屋内に限られるような方が2級に相当します。
3級(厚生年金のみ)は、労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
なお、うつ病などの精神疾患の場合は、就労状況も審査に大きく影響します。例えば、一般雇用でフルタイム勤務をしていた場合は、日常生活能力や労働能力があると見なされ、障害等級に該当しないと判断される可能性が高くなります。
条件2:障害認定日の診断書を用意できること
遡及請求を行う場合、障害認定日時点での診断書が絶対に必要です。具体的には、障害認定日から3ヶ月以内の症状が記載された診断書を提出しなければなりません。そのため、障害認定日から3ヶ月以内に医療機関を受診しており、その際のカルテが残っている必要があります。
診断書はカルテに基づいて作成されるため、医療機関が閉院していたり、カルテが破棄されていたりすると、診断書を作成してもらうことができません。カルテの保存期間は5年間と定められており、医療機関によっては最終受診から5年を過ぎるとカルテが破棄されてしまうことがあります。また、カルテが残っていたとしても、当時の担当医が退職していることを理由に、診断書の作成を断られることもあります。
一方で、障害認定日から現在まで同じ医療機関で同じ医師に診察を受けている場合は、治療期間が長くても診断書の作成がスムーズに進むことが多いです。
条件3:対象の傷病名であること
障害年金には、対象外となる傷病名があります。特に精神障害では、神経症や人格障害は対象外とされています。具体的には「適応障害」「パニック障害」「妄想性人格障害」「境界型人格障害」などの病名が該当します。
そのため、現在の診断名が「うつ病」であっても、障害認定日の診断名が「パニック障害」であった場合、障害認定日の時点では障害年金の支給対象ではなかったと判断され、過去にさかのぼっての受給は難しくなるのです。障害認定日時点での診断名についても、十分に注意する必要があります。
条件4:必要な検査や計測を行っていること
障害の種類によっては、診断書に検査数値や計測値を記載しなければならない場合があります。視覚や聴覚の障害、肢体(手足)の障害などの場合です。原則として、障害認定日より3ヶ月以内の数値を診断書に記載する必要があります。その数値がカルテに載っていない場合は、診断書が作成できず、過去にさかのぼっての受給は難しくなってしまいます。
条件5:現在まで障害等級に該当する状態が継続していること
遡及請求を行う場合、障害認定日から現在(請求日)まで障害の状態が継続しているかどうかが非常に重要になります。障害認定日に障害等級に該当するような状態であっても、現在は症状が改善している場合は、遡及請求が認められる可能性は低くなってしまいます。
具体例として、うつ病の方を想定してみましょう。障害認定日時点では体調が悪く、自宅で寝たきりの状態だったとします。その後、数年間治療を続けることで症状が軽くなりました。そして現在は、仕事もできるようになったという場合です。このような状況では、うつ病の症状が大幅に改善しているため、遡及請求が認められる可能性は低いといえます。
遡及請求を行う際の重要な注意点
さかのぼれるのは障害認定日時点だけ
遡及請求によってさかのぼることができるのは、あくまでも「障害認定日時点」のみです。自分の希望する時点にさかのぼれるわけではないということを理解することが大切です。
うつ病で10年前に初診がある方を例に説明します。10年前に病院を受診してうつ病と診断されました。その後、通院を継続しながらなんとか仕事を続けていたのが障害認定日の時点です。そして3年前になって病状が悪化し、仕事もできなくなって退職してしまいました。現在も、就労困難な状態が続いているというケースです。
このような場合、障害認定日時点では症状が比較的軽く、遡及請求が認められる可能性は低いといえます。ここで重要なのは、病状が最も重くなった3年前にさかのぼって受給することはできないということです。症状の最も重かった時点にさかのぼりたいというお気持ちは十分に理解できます。しかし、障害年金の制度上、さかのぼることができるのは障害認定日時点のみなのです。これは遡及請求について誤解の多いポイントですので、十分に理解しておくことが重要です。
診断書の有効期限に注意する
遡及請求の場合、「障害認定日から3ヶ月以内に作成された診断書」と「現在(請求日)の診断書」の2枚を提出することになります。障害認定日と現在で同じ医療機関に通院している場合はあまり問題ありませんが、異なる医療機関に通院している場合は、診断書を依頼する順番も慎重に考える必要があります。
障害認定日分の診断書には特に有効期限がありませんが、現在(請求日)の診断書には現症日から3ヶ月以内に提出するという有効期限があります。この有効期限を過ぎると診断書は無効になってしまい、再度作成してもらう必要が生じてしまいます。
病歴・就労状況等申立書の書き方に注意
遡及請求を行う場合、障害認定日から現在まで障害の状態が継続しているかどうかが重要になることは既に述べました。障害認定日の診断書と現在の診断書は、それぞれの時点での障害状態を証明する資料となります。しかし、この2つの資料だけでは、その間の障害状態がどのように推移したのかはわかりません。
ここで極めて重要な役割を果たすのが「病歴・就労状況等申立書」です。審査では、この申立書によって障害の進行や変化が確認されるのです。もし、さかのぼる期間中に症状が軽くなっていると判断された場合は、途中で障害等級が変更されたり、遡及請求そのものが認められなかったりする可能性があります。
したがって、病歴・就労状況等申立書には、医療機関での治療内容や症状の経過、障害の状態などを、障害認定日から現在までの流れに沿って詳しく記載する必要があります。この書類の内容が、遡及請求の可否を大きく左右することになるのです。
事後重症請求への切り替えも重要な判断
遡及請求が認められると、一度にまとまった金額を受け取ることができ、生活の大きな支えとなります。そのため、少しでも多くの年金を受給したいと考えるのは自然なことだと思います。しかし、カルテが残っていない場合や、カルテがあっても内容が不十分な場合など、どうしても遡及請求ができないことがあります。
そのような状況で、何年も遡及請求にこだわり続けた結果、最終的に障害年金を受給できなかったという方も存在するのです。最終的に遡及請求が難しいと判断した場合には、速やかに方向転換して事後重症請求を進めることが賢明な判断といえます。一度に大きな金額をもらえることは確かに魅力的ですが、実際に受給できなくては意味がないのです。
最後に
障害年金の遡及請求は、条件を満たせば実現可能な素晴らしい制度です。しかし、細かい条件が多く、その全てをクリアする必要があります。「5年さかのぼれる」という一部の情報だけで判断すると、後になってから大きな後悔につながってしまう可能性があります。
障害年金の遡及請求について具体的に相談したいというご不安があれば、グロースリンク社会保険労務士法人にお気軽にご連絡ください。あなたの状況に応じて、遡及請求が可能かどうかを慎重に検討し、最適な手続き方法をご提案させていただきます。
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