障害年金と調整される支給金ってどんなのがあるの?【専門の社労士が徹底解説!】

こんにちは!

グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。

今回は、障害年金を受給する際に「他の制度からもらえるお金との調整」について詳しくお話ししていきたいと思います。実は、障害年金を受け取るときには、他の制度から受け取れる給付金との間で調整が入るケースがあるんです。「えっ、両方もらえると思っていたのに!」と驚かれる方も少なくありません。でも、安心してください。きちんと仕組みを理解すれば、決して損をすることはないんですよ。

そもそも「併給調整」って何?

まず、「併給調整」という言葉から説明させていただきますね。併給調整というのは、同じような理由で複数の制度からお金が受け取れる場合に、二重に満額を受け取ることを避けるために、どちらかの金額を減らしたり、支給を止めたりする仕組みのことなんです。

これは決して意地悪な仕組みではありません。社会保障制度全体のバランスを保つために必要なルールなんですね。たとえば、同じ病気やケガに対して、いろんな制度から満額のお金がどんどん入ってきたら、かえって不公平になってしまいますよね。そういった事態を避けるために、この調整の仕組みがあるんです。

障害年金と調整される主な給付金

それでは、具体的にどんな給付金が障害年金と調整されるのか、一つずつ見ていきましょう。

1. 傷病手当金との調整

まず最初にご説明するのが、健康保険の「傷病手当金」との調整です。これは多くの方が関わる可能性のある調整なので、しっかりと理解しておいていただきたいポイントです。

傷病手当金というのは、会社員の方が病気やケガで仕事を休んでいる間に、給料の約3分の2を最長1年6か月もらえる制度ですね。一方で、障害年金は病気やケガで障害が残った場合にもらえる年金です。

例えば、傷病手当金が1日7,000円で、障害年金を日割りにすると1日5,000円だったとします。この場合、障害年金の5,000円は全額もらえて、さらに傷病手当金から差額の2,000円がもらえるので、合計で7,000円受け取れることになります。

なお、障害基礎年金だけを受給している方の場合は、この調整の対象外となります。つまり、障害基礎年金と傷病手当金の両方を満額受け取ることができることになります。

また、傷病手当金をもらっていた期間と障害年金の支給期間が重なっている場合には、後から「重複した分を返してください」と連絡が来ることがあります。忘れた頃に返還のお知らせが来ることもあるので、覚えておいてください。もちろん、これは払いすぎた分を返すだけなので、損をするわけではありません。

2. 労災保険との調整

次に、労災保険との調整についてお話しします。仕事中や通勤中のケガや病気で障害が残った場合、労災保険から障害補償給付が受け取れることがありますよね。そして同時に、障害年金も受け取れる可能性があります。

この場合、障害年金の方は満額もらえて、労災保険の方が調整されることになっています。具体的には、労災保険の給付額に一定の調整率(0.73から0.88の間)をかけた金額が支給されます。

調整率は、受け取る障害年金の種類によって変わってきます。たとえば、障害基礎年金だけを受け取っている方の場合は調整率が0.88なので、労災保険が12%減額されます。障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受け取っている方の場合は、調整率が0.83や0.73になることもあります。

ただし、ここで安心していただきたいのは、調整後の労災保険と障害年金を合わせた金額が、調整前の労災保険の金額よりも少なくなることはないように配慮されているということです。つまり、障害年金を請求することで損をすることは絶対にないんです。

なお、労災保険の障害等級が8級から14級の方は、一時金の形で給付を受けるため、この調整の対象にはなりません。調整されるのは、1級から7級の方が受け取る年金形式の給付だけです。

また、労災保険と障害年金が別々の病気やケガで支給される場合には、調整は行われません。たとえば、仕事中の事故で足に障害が残って労災保険を受けている方が、全く関係ない心臓の病気で障害年金を受ける場合などは、両方とも満額受け取ることができます。

3. 他の年金との調整(一人一年金の原則)

年金制度には「一人一年金」という大原則があります。つまり、基本的には一人の方が同時に複数の年金を満額もらうことはできないんです。

たとえば、障害年金を受けている方が65歳になって老齢年金ももらえる年齢になった場合、原則としてどちらか一つを選ぶ必要があります。同様に、障害年金と遺族年金の両方の受給権がある場合も、どちらか一つを選択することになります。

ただし、65歳以降になると少し特別なルールがあって、障害基礎年金と老齢厚生年金、あるいは障害基礎年金と遺族厚生年金という組み合わせで受け取ることができるようになります。つまり、基礎年金の部分と厚生年金の部分を別々の種類で組み合わせることが可能になるんです。

このあたりは少し複雑なので、65歳が近づいてきたら、どの組み合わせが一番有利になるか、しっかりと計算してから選択することをおすすめします。

4. 雇用保険(失業給付)との関係

「障害年金をもらっていても、失業保険はもらえるの?」というご質問をよくいただきます。

実は、障害年金と雇用保険の失業給付(基本手当)の間には、併給調整の規定がないんです。つまり、理論的には両方とも受け取ることができます。

ただし、ここで注意していただきたいのは、失業給付というのは「働く意思と能力があるのに仕事が見つからない人」に支給されるものだということです。一方で、障害年金の2級というのは、基本的に「働くことが難しい状態」を示しています。

ですから、特に精神疾患や内部疾患などで障害年金2級を受けている方の場合、失業給付の要件である「働く能力がある」という部分を満たすことが難しいケースが多いです。制度上は併給調整されないものの、実際には両方同時に受け取ることが難しい場合もあるということを理解しておいてください。

5. 20歳前障害の場合の特別なルール

20歳になる前に初診日がある病気やケガで障害年金を受けている方の場合、少し特別なルールがあります。

20歳前障害による障害基礎年金は、保険料を払っていない期間の障害に対して支給されるものなので、税金から支払われているんです。そのため、労災保険などの他の補償制度からお金を受け取れる場合には、20歳前障害による障害基礎年金の方が全額支給停止になってしまいます。

これは、同じ病気やケガが原因でなくても適用されるという点で、他の調整とは少し違っています。注意が必要なポイントです。

併給調整で損をすることはないので安心してください

ここまでいろいろな調整についてお話ししてきましたが、最後に一番大事なことをお伝えします。

それは、「併給調整があっても、決して損をすることはない」ということです。

どの調整の場合でも、調整後に受け取れる金額の合計が、調整前の金額よりも少なくなることはないように配慮されています。たとえば労災保険が調整される場合でも、労災保険と障害年金を合わせた金額が、調整前の労災保険よりも少なくなることはありません。

ですから、「調整されるなら障害年金は請求しない方がいいかな」と考える必要は全くありません。むしろ、受け取れる権利があるものはきちんと請求して、受け取っていただくことをおすすめします。

まとめ

障害年金と調整される主な給付金をまとめると、次のようになります。

  • 傷病手当金(同一傷病の場合、障害厚生年金が優先され差額調整)
  • 労災保険の障害補償給付(障害年金が優先され、労災が調整率で減額)
  • 他の年金(一人一年金の原則により選択)
  • 雇用保険(制度上は調整なしだが、実際の受給は困難な場合も)

併給調整は複雑に感じられるかもしれませんが、基本的には「二重に満額もらえないように調整する」という考え方で、損をしないように配慮されている仕組みなんです。

もし「自分の場合はどうなるの?」と不安に思われた方は、ぜひ我々にご相談ください1。私たちグロースリンク社会保険労務士法人では、障害年金に関する無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください

障害年金は、病気やケガで困っている方の生活を支える大切な制度です。併給調整という仕組みを正しく理解して、受け取れる権利はしっかりと活用していただきたいと思います。

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