双極性障害のⅠ型とⅡ型はなにが違うの?【専門の社労士が徹底解説!】

こんにちは!
グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。
「自分はどちらのタイプなのか分からない…」
双極性障害には大きく分けてⅠ型とⅡ型という2つのタイプがあり、それぞれ症状の現れ方や生活への影響が異なります。
当事務所では、双極性障害でお悩みの方から障害年金に関するご相談を数多くいただいておりますが、ご自身がどちらのタイプなのかを正確に理解されていない方も少なくありません。
結論から申し上げますと、双極性障害のⅠ型とⅡ型の最も大きな違いは「躁状態の激しさ」です。Ⅰ型では日常生活に大きな支障をきたすほどの激しい躁状態が現れるのに対し、Ⅱ型は比較的穏やかな軽躁状態とうつ状態を繰り返します。
そこで今回は、双極性障害のⅠ型とⅡ型の違いについて、障害年金の観点も交えながら、社労士の視点から分かりやすく解説していきます。
双極性障害とは何か
まず、双極性障害そのものについて簡単にご説明します。双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な症状を意味する「双極性障害」という名称が一般的に使われています。
この病気の特徴は、躁状態でもうつ状態でもない、いわゆる普通の状態である「寛解期」があることです。つまり、常に症状が現れているわけではありません。発症年齢は10代後半から20代に多く、男女差はほとんどないとされています。有病率は約100人に1人から2人程度と言われており、決して珍しい病気ではありません。
双極性障害は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こると考えられていますが、その詳しい原因はまだ完全には解明されていません。遺伝的な要因も関係していると考えられており、一卵性双生児の研究では片方が発症した場合、もう片方が発症する確率は40から70パーセントという報告もあります。ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではなく、ストレスなどの環境的な要因が重なることで発症すると考えられています。
Ⅰ型とⅡ型の決定的な違い
双極性障害のⅠ型とⅡ型の最も大きな違いは、躁状態の程度です。どちらのタイプも気分の高揚や活動性の増加といった共通点はありますが、その激しさと日常生活への影響度が大きく異なります。
Ⅰ型の躁状態は、社会生活に重大な支障をきたすほどの激しいものです。具体的には、夜も眠らずに動き回る、話が止まらない、根拠のない自信に満ち溢れて大きな買い物やギャンブルに手を出す、性的に奔放になる、攻撃的で怒りっぽくなり些細なことで暴力を振るうといった症状が現れます。このような症状が1週間以上、ほぼ毎日、1日の大半にわたって続く場合、Ⅰ型と診断されます。
周囲の人からは「人が変わった」「別人のよう」と映るほどの変化があり、本人は絶好調だと感じていても、実際には社会的信用を失ったり、人間関係が破綻したりする深刻な事態を引き起こすことがあります。そのため、入院治療が必要になるケースも少なくありません。
一方、Ⅱ型の軽躁状態は、Ⅰ型ほど激しくはありません。いつもより活動的でおしゃべりになる、アイデアが次々に浮かぶ、睡眠時間が短くても元気に過ごせるといった症状が4日以上続きます。このような状態が4日以上ほぼ毎日、1日の大半にわたって見られる場合にⅡ型と診断されます。
Ⅱ型の軽躁状態では、本人も周囲も「調子が良い」と感じることが多く、病気の症状だと気づかないことがよくあります。そのため、Ⅱ型の方は最初に「うつ病」と診断されることが非常に多く、正しい診断にたどり着くまでに平均4年から10年かかると言われています。
うつ状態の期間にも違いがある
実は、双極性障害ではうつ状態の期間が思いのほか長いという特徴があります。病気の期間全体を見ると、Ⅰ型では約3分の1、Ⅱ型では約半分の期間がうつ状態だと言われています。つまり、Ⅱ型のほうがうつ状態の期間が長く、より重いうつ症状に悩まされる傾向があるのです。
このため、「Ⅱ型のほうがⅠ型よりも軽症」というわけでは決してありません。軽躁状態は確かにⅠ型の躁状態よりも穏やかですが、長く続くうつ状態による苦痛は非常に大きいものです。また、Ⅱ型の方は併存疾患、つまり双極性障害以外の精神疾患を併せ持つことが多いことも知られており、不安障害やパーソナリティ障害などが重なることで、治療がより複雑になることもあります。
うつ状態では、一日中憂うつな気分が続き、好きだった趣味やテレビ番組にも関心がなくなります。食欲が低下したり、逆に過食になったり、睡眠障害が現れることもあります。体を動かすことが億劫になり、仕事や家事といった日常生活の活動が困難になります。自分を責める気持ちが強くなり、自殺を考えることもあるため、注意が必要です。
治療の違いについて
Ⅰ型とⅡ型では、治療のアプローチにも若干の違いがあります。双極性障害の治療は、基本的には気分安定薬を中心とした薬物療法が主体となりますが、抗うつ薬の使用には慎重な判断が必要です。
双極性障害のうつ状態では、一般的なうつ病の治療薬である抗うつ薬を使用すると、躁状態や軽躁状態に急に転じてしまう「躁転」のリスクがあります。特にⅠ型の場合は、躁転してしまったときの代償があまりにも大きいため、抗うつ薬の使用は原則として避けられます。
Ⅱ型の場合は、軽躁状態への移行はⅠ型ほど警戒されませんが、それでも慎重な判断が必要です。気分安定薬や抗精神病薬を使用しても改善が見られず、苦痛が強いときには、やむを得ず慎重に抗うつ薬を使用することもありますが、これは推奨されている治療法ではありません。医師は軽躁状態の予兆を見極め、適切に対処することを心がけています。
また、薬物療法と並行して心理療法も重要です。ご自身が病気のことを理解し、症状が現れたときに適切な対応ができるようサポートを受けることで、より安定した日常生活を送れるようになります。
障害年金の観点からの違い
双極性障害で障害年金を申請する場合、Ⅰ型とⅡ型の違いは審査においても重要なポイントとなります。障害年金の審査では、日常生活能力の制限の程度が重視されますが、Ⅰ型とⅡ型ではその評価のされ方が異なることがあります。
Ⅰ型の場合は、躁状態による社会的トラブルや危険な行動が評価の対象となります。例えば、高額な買い物やギャンブルで散財した、怪しげな投資話に乗ってしまった、人間関係でトラブルを起こした、暴力的な行動をとったといったエピソードは、日常生活や社会生活に大きな支障をきたしている証拠として考慮されます。躁状態による入院歴なども重要な判断材料となります。
Ⅱ型の場合は、躁状態が比較的軽いため、障害年金の認定上は軽躁状態のエピソードはあまり評価されない傾向があります。そのため、診断書の作成を依頼する際には、うつ状態のときの症状や生活の困難さを重点的に伝えることが重要になります。食事の準備や掃除、買い物といった日常生活動作がどの程度制限されているか、対人関係や金銭管理にどのような困難があるか、家族からどのような援助を受けているかといった具体的な情報を医師に正確に伝える必要があります。
ただし、Ⅰ型であってもⅡ型であっても、障害年金の審査において最も重視されるのは、現在の日常生活能力の制限の程度です。躁状態やうつ状態によって、仕事や日常生活にどの程度の支障が出ているかが判断の基準となります。
よくある誤解と注意点
双極性障害のⅠ型とⅡ型について、いくつかよくある誤解がありますので、ここで整理しておきましょう。
まず、「Ⅱ型はⅠ型よりも軽い病気」という誤解です。先ほどもお伝えしたとおり、Ⅱ型のほうがうつ状態の期間が長く、その苦痛は非常に大きいものです。また、併存疾患を抱えることも多いため、決して軽い病気とは言えません。
次に、「躁状態のときは調子が良いのだから問題ない」という誤解です。特にⅡ型の軽躁状態では、本人も周囲も調子が良いと感じてしまいがちですが、これは病気の症状です。この状態を放置すると、より重症の躁状態に移行したり、うつ状態への転換が激しくなったりすることがあります。
また、「うつ病の薬を飲めば治る」という誤解もあります。双極性障害とうつ病は別の病気であり、治療法も異なります。うつ病の薬である抗うつ薬を双極性障害の方が服用すると、躁転のリスクが高まるため、適切な診断と治療が必要です。
最後に、「双極性障害は完治する病気」という誤解です。双極性障害は、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、安定した生活を送ることは十分に可能ですが、完治を目指す病気ではなく、症状の安定である「寛解」を目指して治療を継続していく必要があります。
ご自身のタイプを知ることの重要性
双極性障害のⅠ型とⅡ型のどちらに該当するかを知ることは、適切な治療を受けるために非常に重要です。医師は通常、どちらのタイプかを患者さんに伝えますが、もし伝えられていない場合は、次回の受診時に遠慮なく尋ねてみてください。
ご自身のタイプを正確に理解することで、症状の予兆に気づきやすくなり、早めの対処が可能になります。また、障害年金の申請を考える際にも、タイプに応じた適切な書類作成が可能になります。
双極性障害は、治療を続けることで日常生活をコントロールできる病気です。しかし、治療を中断すると再発のリスクが高まり、再発を繰り返すほど症状は重症化していきます。医師の指示に従って薬の服用を続け、定期的に通院することが何より大切です。
障害年金申請のポイント
双極性障害で障害年金を申請する場合、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
まず、初診日の特定が重要です。双極性障害の場合、最初はうつ病と診断されることが多いため、初めてメンタルヘルスの症状で医療機関を受診した日が初診日となります。不眠や頭痛で内科を受診した後に精神科を受診したような場合、内科受診日が初診日となる可能性もありますので、注意が必要です。
次に、診断書の記載内容が非常に重要です。医師は診察時に患者さんの日常生活の詳細をすべて把握しているわけではありませんので、診断書作成を依頼する際には、食事の準備や掃除、買い物、金銭管理、対人関係など、日常生活のどの部分にどのような困難があるのかを具体的に伝える必要があります。また、家族からどのような援助を受けているかも重要な情報です。
病歴・就労状況等申立書の作成も欠かせません。発症から現在までの病歴、治療経過、そして日常生活や仕事での具体的な困りごとを詳細に記載する書類です。診断書では伝わりにくい日常生活の実態を補足する大切な書類ですので、具体的なエピソードを盛り込んで丁寧に作成しましょう。
双極性障害の障害年金申請は、タイプによって症状の伝え方や書類の作成方法が異なる場合があります。また、就労状況や日常生活の状況をどのように記載するかによって、認定結果が大きく変わることもあります。ご自身で手続きを進めるのが難しいと感じる場合は、障害年金専門の社労士に相談することをおすすめします。
最後に
双極性障害のⅠ型とⅡ型は、躁状態の激しさという点で大きく異なりますが、どちらも適切な治療とサポートが必要な病気です。ご自身がどちらのタイプなのかを正確に理解し、それに応じた治療を続けることが、安定した生活を送るために何より大切です。
もしあなたが双極性障害でお悩みでしたら、一人で抱え込まず、ぜひ当事務所にご相談ください。障害年金の受給可能性や手続きの流れについて、あなたの状況を丁寧にヒアリングし、分かりやすくご説明させていただきます。
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