差引認定って何なの?【専門の社労士が徹底解説!】

こんにちは!

グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。

「障害年金の手続きで『差引認定』という言葉を聞いたけど、よくわからない…」

「もともと障害があるところに新しい障害が加わったら、障害年金はどうなるの?」

あなたがこのような疑問を抱えていませんか?障害年金の認定方法には、併合認定や総合認定など様々な種類がありますが、その中でも差引認定は少し特殊な位置づけにあります。

当事務所にも、差引認定に該当するケースで障害年金に関するご相談をいただくことがあります。結論から申し上げますと、差引認定は他の認定方法と異なり、障害年金の等級が下がる可能性のある認定方法です。

しかし、「どうして等級が下がることがあるの?」「自分は差引認定に該当するの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、差引認定の仕組みと注意点について、社労士の視点から分かりやすく解説します。

差引認定とは?基本的な考え方を理解しよう

差引認定とは、障害認定の対象とならない障害(前発障害)と同一部位に、新たな障害(後発障害)が生じたケースが対象となる認定方法です。

この制度の背景には、障害年金における公平性の確保という考え方があります。例えば、もともと左手の指に障害があった方が、新たに左手全体に障害が生じたとします。このとき、もし後から生じた障害だけで障害年金の等級を判定すると、もともと障害のなかった方と比べて、実際の障害の程度よりも重く評価されてしまう可能性があります。

そこで差引認定では、全体的な障害状態を評価したあと、前発障害の程度を差し引いたうえで、後発障害による実質的な障害の程度を評価するのです。

この仕組みにより、もともと障害のなかった方と、もともと障害があった方との間で、同じ現在の障害状態であれば同じ評価を受けられるようになっています。つまり、障害年金を受給する方全体での公平性を保つために設けられた制度といえます。

差引認定が適用される具体的なケース

差引認定が適用されるのは、以下のような条件を満たす場合です。

まず第一に、前発障害が障害年金の対象にならない程度の障害であることが必要です。例えば、片手の指に軽度の機能障害があった場合などが該当します。障害があっても、日常生活や仕事にそれほど大きな支障がなく、障害年金の等級に該当しない程度の障害が前発障害となります。

第二に、前発障害と同一部位に新たな障害(後発障害)が生じることが条件です。前発障害が左手の指の障害であれば、後発障害も左手の障害である必要があります。全く別の部位に障害が生じた場合は、差引認定ではなく併合認定など別の認定方法が適用されます。

第三に、後発障害だけで評価すると、実際の障害の重さより重く認定されてしまう可能性がある場合に差引認定が適用されます。前発障害の影響がすでにあるため、後発障害のみで判断すると不公平になってしまうケースです。

差引認定の具体例で理解を深めよう

ここでは、実際の認定例を用いて差引認定の仕組みを見ていきましょう。

認定例:もともと左手の指に障害があり、その後左手全体に麻痺が生じたケース

あるAさんは、若いころの事故で左手の小指と薬指の第一関節から先を失っていました。しかし、この障害だけでは日常生活にそれほど大きな支障はなく、障害年金の対象となる等級には該当していませんでした。

ところがその後、脳卒中を発症し、左半身に麻痺が残ってしまいました。現在のAさんの左手全体の状態を評価すると、仮に障害等級2級に相当するとします。

しかし、もともとAさんには左手の指の障害がありました。この前発障害を考慮せずに評価すると、もともと左手に何も障害のなかった方と同じ評価を受けることになり、不公平になってしまいます。

そこで差引認定では、まず現在の左手全体の障害状態(2級相当)を評価し、そこから前発障害(小指と薬指の障害)の程度を差し引きます。差し引いた結果、実際に新たに生じた後発障害による障害の程度を正確に評価するのです。

このような手順を踏むことで、もともと障害のなかった方と、もともと軽度の障害があった方との間で、公平な評価が実現されるのです。

差引認定と併合認定の違いに注意しよう

障害年金の手続きを進める中で、差引認定と併合認定を混同してしまう方もいらっしゃいます。この二つは全く異なる認定方法ですので、違いをしっかり理解しておきましょう。

併合認定は、複数の障害を個別に等級判定したうえで、専用の認定表にあてはめて最終的な障害等級を決定する認定方法です。それぞれの障害が体に及ぼす全体的な影響が等級判定に反映されるため、通常は障害等級が上がる可能性があります。例えば、右手に障害があり、さらに視力にも障害がある場合、両方の障害を併合して評価することで、より高い等級に認定される可能性があるのです。

一方、差引認定は前発障害の影響を差し引いて評価する方法ですので、障害等級が下がる可能性がある点が大きな違いです。

また、併合認定は異なる部位の障害を対象とするのに対し、差引認定は同一部位の障害を対象とする点も重要な違いといえます。

このように、複数の障害を抱えている場合でも、障害の部位や発生時期によって適用される認定方法が異なるのです。

差引認定の手続きで押さえておきたいポイント

差引認定に該当する可能性がある場合、障害年金の申請にあたっていくつか押さえておきたいポイントがあります。

前発障害の証明が重要になる

差引認定では、前発障害がどの程度のものだったかを正確に証明することが非常に重要です。前発障害についての医療記録や、当時の日常生活の状況を示す資料などを準備しておくとよいでしょう。

前発障害の程度が正確に評価されなければ、後発障害の評価にも影響が出てしまいます。過去の診療記録やレントゲン写真、障害者手帳の記録などが残っていれば、それらを活用することができます。

後発障害の診断書は詳細に記載してもらう

後発障害についての診断書は、現在の障害状態を詳細に記載してもらう必要があります。日常生活でどのような困難があるのか、どの程度の介助が必要なのかなど、具体的な状況を医師に正確に伝えて記載してもらいましょう。

また、前発障害との区別が明確になるよう、新たに生じた障害の範囲や程度についても丁寧に記載してもらうことが大切です。

病歴・就労状況等申立書で実態を伝える

病歴・就労状況等申立書では、前発障害があった時期の生活状況と、後発障害が生じてからの生活状況の変化を具体的に記載することが重要です。

例えば、「前発障害があった時期は、左手の小指と薬指は使えなかったものの、親指と人差し指、中指は問題なく使えたため、箸を使った食事や文字を書くことは自分でできていました。しかし脳卒中の後は、左手全体に力が入らず、箸を持つことも文字を書くこともできなくなりました」というように、具体的なエピソードを交えて記載するとよいでしょう。

診断書では伝わりにくい日常生活の実態を補足する大切な書類ですので、時間をかけて丁寧に作成することをおすすめします。

差引認定でよくある疑問にお答えします

ここでは、差引認定についてよくいただく質問にお答えします。

Q1. 前発障害と後発障害の発生時期にはどのくらいの間隔が必要ですか?

差引認定においては、前発障害と後発障害の発生時期に特定の間隔が求められているわけではありません。何十年も前の障害であっても、新たな障害が同一部位に生じれば差引認定の対象となる可能性があります。

重要なのは、前発障害が障害年金の対象とならない程度の障害であったこと、そして同一部位に後発障害が生じたことです。

Q2. 差引認定になると必ず等級が下がるのですか?

差引認定が適用されたからといって、必ずしも等級が下がるわけではありません。前発障害の程度や後発障害の程度によっては、差し引いた後でも十分に障害年金の等級に該当することもあります。

ただし、差引認定の性質上、前発障害がなかった場合と比較すると、認定される等級が低くなる可能性があることは理解しておく必要があります。

Q3. 自分のケースが差引認定に該当するかわからないのですが…

差引認定に該当するかどうかの判断は、医学的な知識と障害年金制度の深い理解が必要となります。ご自身で判断が難しい場合は、障害年金専門の社労士に相談することをおすすめします。

当事務所では、あなたの障害の状態を詳しくヒアリングしたうえで、差引認定に該当するか、またどのような準備が必要かについて、無料でご相談を承っております。

専門家のサポートを活用しましょう

差引認定は、障害年金の認定方法の中でも特に複雑で、専門的な知識が求められる分野です。前発障害の証明から後発障害の評価まで、慎重に準備を進める必要があります。

もしあなたが「もともと障害があった部位に新たな障害が生じた」という状況にあるのでしたら、一人で手続きを進めようとせず、ぜひ専門家にご相談ください。

私たち障害年金に精通した社労士は、あなたの状況を丁寧にヒアリングし、差引認定に該当するかどうかの判断から、必要な書類の準備、医療機関との連携まで、トータルでサポートさせていただきます。

適切な書類作成と的確なアドバイスにより、あなたが本来受けるべき障害年金を受給できるよう、全力でお手伝いいたします。

最後に

差引認定は、障害年金制度における公平性を保つために設けられた重要な仕組みです。もともと障害があった部位に新たな障害が生じた方にとって、正確な評価を受けるための制度といえます。

ただし、その仕組みは複雑で、一般の方がご自身で全てを理解して手続きを進めるのは簡単ではありません。また、前発障害の証明や後発障害の評価など、専門的な判断が求められる場面も多くあります。

もしあなたが差引認定に該当するかもしれない状況にあり、障害年金の手続きでお悩みでしたら、ぜひ当事務所にご相談ください。現在、無料相談を実施しています!あなたの状況を丁寧にヒアリングし、最適な手続きの方法について分かりやすくご説明させていただきます。

「もしかしたら、私も差引認定に該当するかも…」

そう思われたら、まずはお気軽にお問い合わせください。専門家として、あなたの明るい未来のため伴走させていただきます。

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