国民年金の、法定免除を受けるためには【専門の社労士が徹底解説!】
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こんにちは!
グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。
法定免除を活用することで、国民年金保険料の負担をゼロにできる可能性があります。しかし、制度の内容や手続き方法をよく理解していないと、思わぬところで損をしてしまうこともあります。
そこで今回は、国民年金の法定免除制度について、社労士の視点から分かりやすく解説いたします。手続きの流れや注意点、さらには法定免除のメリット・デメリットまで、詳しくお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
法定免除とは?申請免除との違い
国民年金保険料の免除制度には、大きく分けて「法定免除」と「申請免除」の2つがあります。まずはこの違いからご説明しましょう。
申請免除は、所得が少ない方などが経済的な理由で保険料を納めることが困難な場合に、所得審査を経て認められる免除制度です。毎年申請が必要で、本人や世帯主、配偶者の所得状況によって全額免除や一部免除が決定されます。
一方、法定免除は所得審査を必要とせず、法律で定められた特定の要件を満たす方について、届出により保険料が全額免除される制度です。つまり、収入の有無に関わらず、要件に該当していれば誰でも利用できるのが大きな特徴です。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20140710.html
法定免除を受けられるのはどんな人?
法定免除の対象となるのは、国民年金の第1号被保険者で、次のいずれかに該当する方です。
まず、障害基礎年金または障害厚生年金、障害共済年金の1級か2級を受給している方が該当します。障害年金を受給できるようになった時点で、法定免除の要件を満たすことになります。
ただし、障害厚生年金3級の方は法定免除の対象にはなりません。この点は勘違いされやすいので、しっかりと覚えておいてください。また、障害年金を受給開始した当初から3級だった場合も、法定免除には該当しません。
次に、生活保護法による生活扶助を受けている日本国籍の方も対象となります。生活扶助を受け始めた時点から、法定免除を申請することができます。ただし、生活扶助以外の生活保護を受けている方や、生活扶助を受けている外国籍の方は法定免除には該当しません。そのような場合は、申請免除などの別の制度を利用することになります。
最後に、国立ハンセン病療養所や国立保養所など、厚生労働大臣が指定する施設で療養している方も法定免除の対象です。
法定免除が受けられる期間はいつから?
法定免除が適用される期間は、免除理由に該当した日を含む月の前月分から、該当しなくなった日を含む月分までとなります。
例えば、障害年金の場合であれば、障害年金が認定された日を含む月の前月の保険料から免除になります。生活保護の場合は、生活保護を受け始めた日を含む月の前月の保険料から免除となります。
ここで注意していただきたいのは、法定免除は第1号被保険者の期間のみが対象ということです。会社員として働いている期間(第2号被保険者)や、会社員の配偶者として扶養に入っている期間(第3号被保険者)は、法定免除の対象にはなりません。
法定免除を受けるための手続き方法
法定免除を受けるためには、市区町村の年金課または年金事務所の国民年金課に「国民年金被保険者関係届書(申出書)」を提出する必要があります。多くの市区町村では、窓口での提出だけでなく、郵送での提出も受け付けています。
手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
まず、基礎年金番号が分かる書類が必要です。年金手帳、基礎年金番号通知書、納付書などのいずれかをご準備ください。最近では、マイナンバーカードや通知カードでも手続きが可能な場合があります。
障害年金を受給している方は、障害年金の年金証書を持参してください。生活保護を受給している方は、福祉事務所が発行する生活保護受給証明書や、生活扶助を受けていることが分かる開始通知書が必要です。
代理の方が手続きをする場合は、本人の委任状と代理人の本人確認書類も必要になります。
届出をすると、およそ1~2か月後に日本年金機構から「国民年金保険料免除理由該当(不該当)通知書」が郵送で届きます。この通知書によって、法定免除が承認されたことが確認できます。
届出を忘れるとどうなる?
ここで重要な注意点があります。法定免除の要件に該当していても、届出をしなければ法定免除の処理は行われません。
例えば、障害年金を受給し始めても、自動的に国民年金保険料が免除されるわけではないのです。届出を忘れてしまうと、保険料の請求が続き、場合によっては未納扱いになってしまうこともあります。
実際に、障害年金を受給しているにもかかわらず、法定免除の届出を忘れていたために保険料の未納が続いてしまい、後から困ったという方もいらっしゃいます。要件に該当したら、できるだけ早く届出を行うようにしましょう。
法定免除の期間が終わるとき
障害年金の等級が1級や2級から3級に変更になった場合、どうなるのでしょうか。実は、障害年金が1級や2級から3級になった場合でも、法定免除はそのまま継続します。受給開始当初から3級だった場合は法定免除に該当しませんが、途中から3級になった場合は継続されるのです。
さらに、障害年金が3級にも該当しなくなった場合は、該当しなくなった日から3年間のみ法定免除が継続されます。3年後からは保険料の納付が必要になりますので、ご注意ください。
また、法定免除の要件に該当しなくなったときには、必ず届出が必要です。自動では解除されないため、3年経過後に再確認の通知が届きます。それまでは法定免除のままになっていますので、状況が変わったときは忘れずに届出をしましょう。
法定免除のメリットとは?
法定免除の最大のメリットは、もちろん国民年金保険料の負担がゼロになることです。毎月の保険料は決して小さくない金額ですから、経済的な負担が大きく軽減されます。
また、法定免除の期間は、老齢年金や障害年金、遺族年金を受給するために必要な受給資格期間に算入されるという点も重要です。保険料を納めていなくても、将来の年金受給権を守ることができるのです。
さらに、法定免除の届出は過去に遡って行うことができます。例えば、10年前に障害年金が認められていたにもかかわらず、法定免除の届出をしていなかった場合でも、今から届出をすれば過去10年分まで遡って法定免除として認められます。その場合、本来免除であった分の支払い済の保険料は還付されます。
特に、生活保護を受けている方の中には、法定免除の届出漏れによって納付要件が不足していると思い込んでいる方もいらっしゃいます。当事務所でも、「納付要件が足りない」というご相談を受けて記録を確認したところ、実は法定免除の漏れがあり、届出をしたことで納付要件を満たすことができたというケースがあります。
法定免除のデメリットも知っておこう
法定免除には多くのメリットがある一方で、知っておくべきデメリットもあります。それは、将来受け取る老齢基礎年金の金額が減額されるという点です。
法定免除の期間は、保険料を全額納付した場合と比較して、老齢基礎年金の受給額は2分の1(平成21年3月までの分は3分の1)として計算されます。つまり、将来の年金額が少なくなってしまうのです。
もし、老齢基礎年金の金額を満額に近づけたいという場合は、法定免除の期間であっても、本人の申出により保険料を納付することができます。これを「納付申出」といいます。
ただし、障害基礎年金を受給している方の場合、納付申出をして保険料を納めても、障害基礎年金の金額には影響ありません。老齢基礎年金と障害基礎年金は同時に受給することはできないため、結果的に障害基礎年金を生涯にわたって受給することになった場合は、納付した保険料の分だけ損をしてしまう可能性もあります。
将来どちらの年金を受給することになるかは、現時点では分からないことも多いでしょう。ご自身の状況をよく考えて、納付申出をするかどうかを判断することが大切です。
追納という選択肢もある
法定免除の承認を受けた期間について、後から保険料を納めたいという場合には、「追納」という制度を利用することができます。追納をすることで、老齢基礎年金の金額を満額に近づけることが可能です。
追納は、過去10年分まで遡って納付することができます。また、追納した保険料は社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の軽減にもつながります。
ただし、保険料の納付期限から2年以内に追納する場合は当時の保険料額になりますが、2年後以降に追納する場合は、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。つまり、早く追納するほどお得ということになります。
追納を希望する場合は、年金事務所への申し込みが必要です。市区町村の窓口では受け付けていませんので、お近くの年金事務所にお問い合わせください。
法定免除と障害年金の納付要件の関係
障害年金を請求する際には、「保険料納付要件」というものを満たす必要があります。これは、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること、あるいは初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことです。
ここで重要なのは、生活保護による法定免除は、生活保護の開始とともに免除となっているため、あとから届出をしても納付要件に反映させることができるという点です。
通常の申請免除は、申請後から開始されるため、初診日以降に申請を行っても障害年金の納付要件とは関係ありません。しかし、生活保護による法定免除の場合は、「届出漏れにより記録されていなかったものを反映しただけ」という扱いになるため、初診日の前日時点に遡って免除として認められるのです。
生活保護を受けている方で、「納付要件が足りないから障害年金は無理だ」と諦めている方は、法定免除の届出が漏れていないか、ぜひ一度確認してみてください。
実際の手続きの流れ
ここで、実際に法定免除の手続きを行う際の流れを、具体的にご説明します。
まず、障害年金を受給することが決定したら、年金証書が届きます。この年金証書を受け取ったら、できるだけ早く法定免除の届出を行いましょう。
届出先は、お住まいの市区町村の年金課、または最寄りの年金事務所です。「国民年金被保険者関係届書(申出書)」という用紙に必要事項を記入し、年金証書と基礎年金番号が分かる書類を添えて提出します。
届出書は、市区町村の窓口や年金事務所で入手できるほか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。郵送での提出も可能ですので、窓口に行くことが難しい方でも安心です。
届出を提出すると、日本年金機構で審査が行われます。およそ1~2か月後に、「国民年金保険料免除理由該当(不該当)通知書」が自宅に郵送されてきます。この通知書で法定免除が承認されたことを確認しましょう。
承認後は、国民年金保険料の納付書が届かなくなります。もし届いてしまった場合でも、法定免除が承認されていれば納付する必要はありません。
よくある質問とその回答
ここで、法定免除について当事務所によく寄せられる質問をいくつかご紹介します。
Q1. 法定免除の届出はいつまでにしなければいけませんか?
法定免除の届出に期限はありません。要件に該当したら、いつでも届出をすることができます。ただし、届出が遅れると、その間の保険料が未納扱いになってしまう可能性があるため、できるだけ早く届出をすることをおすすめします。
Q2. 障害厚生年金3級を受給していますが、法定免除は受けられますか?
障害厚生年金3級の方は、法定免除の対象にはなりません。法定免除の対象となるのは、障害年金の1級または2級を受給している方のみです。
Q3. 会社員として働いていますが、法定免除は受けられますか?
会社員として働いている期間は、国民年金の第2号被保険者となるため、法定免除の対象にはなりません。法定免除は第1号被保険者の期間のみが対象です。
Q4. 法定免除を受けると、将来の年金額にどれくらい影響しますか?
法定免除の期間は、保険料を全額納付した場合と比較して、老齢基礎年金の受給額が2分の1として計算されます。具体的な金額は、法定免除の期間の長さや、他の期間の納付状況によって異なります。
私たち専門家に相談するメリット
法定免除の手続き自体は、それほど複雑なものではありません。しかし、ご自身の状況に応じて、法定免除を受けるべきか、納付申出をするべきか、追納をするべきかといった判断は、なかなか難しいものです。
また、障害年金を受給するための手続きと並行して法定免除の届出を行う場合、手続きの順序や必要書類の準備など、分からないことも多いでしょう。
私たち障害年金専門の社労士は、こうした複雑な制度について、あなたの状況に合わせた最適なアドバイスをすることができます。将来の年金額のシミュレーションや、納付要件の確認など、専門的な視点からサポートいたします。
当事務所では、無料でのご相談を受け付けております。法定免除について分からないことや不安なことがあれば、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。
まとめ
国民年金の法定免除は、障害年金を受給している方や生活保護を受けている方にとって、経済的な負担を大きく軽減できる重要な制度です。しかし、届出を忘れてしまうと、思わぬところで損をしてしまう可能性もあります。
法定免除を受けるためには、要件に該当したらできるだけ早く届出を行うこと、そして将来の年金額への影響も考慮して、納付申出や追納についても検討することが大切です。
もしあなたが法定免除の対象となる可能性がある場合、あるいは法定免除について詳しく知りたいという場合は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。専門家として、あなたの状況に最適なアドバイスをさせていただきます。
お一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。私たちが、あなたの生活の安定と将来のために、全力でサポートいたします。
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