社会的治癒を活用した遡及請求とは?初診日を”リセット”して障害年金を受給する方法を社労士が解説

社会保険労務士 土江

こんにちは!グロースリンク社会保険労務士法人の土江です。

「昔かかった病気が再発したけれど、当時は保険料を納めていなかったから障害年金は無理…」
「若い頃の初診日だと、障害基礎年金しかもらえないと言われた」

障害年金のご相談では、こうした「初診日」にまつわるお悩みをよくいただきます。実務上、初診日の壁であきらめてしまう方は少なくありません。

しかし、こうしたケースで受給の道を開く可能性があるのが、「社会的治癒(しゃかいてきちゆ)」という考え方です。

結論からお伝えすると、社会的治癒が認められると、初診日を”あとの受診日”に変えることができ、これまで難しかった遡及請求や障害厚生年金の受給が可能になることがあります。

少し専門的な内容ですが、大切な選択肢ですので、わかりやすく解説します。

 

社会的治癒とは?

社会的治癒とは、簡単に言うと「医学的には完全に治っていなくても、社会生活上は治ったのと同じ状態が一定期間続いた場合、いったん治ったものとして扱う」という考え方です。

たとえば、若い頃に一度病気になったものの、その後は治療を受けずに何年も普通に働き、生活できていた——。その後に再発した場合、最初の発症と再発を「別の病気」として切り離して考えることができるのです。

これが認められると、再発後に初めて受診した日が、新しい「初診日」になります。いわば、初診日を”リセット”できるわけです。

なお、社会的治癒は法律に明確な定義があるわけではなく、過去の判例や審査の積み重ねによって認められてきた考え方です。

 

なぜ「初診日のリセット」が大きな意味を持つのか

初診日が変わると、なぜ受給できる可能性が広がるのか。大きく3つのメリットがあります。

①保険料の納付要件を満たせることがある

障害年金を受給するには、初診日の前日時点で一定の保険料を納めている必要があります。若い頃の初診日では納付要件を満たせなかった方でも、社会的治癒後の初診日なら要件を満たせることがあります。

②障害厚生年金を請求できることがある

最初の初診日は国民年金だったけれど、社会復帰して会社員になった後(=厚生年金加入中)に再発した場合、社会的治癒が認められれば障害厚生年金を請求できます。

障害厚生年金は、障害基礎年金にはない3級があり、金額も上乗せされるため、受給できる範囲・金額の面で大きなメリットがあります。

③遡及請求(さかのぼって受給)につながることがある

社会的治癒後の初診日を起点にすることで、障害認定日の時点で要件を満たしていれば、過去にさかのぼって年金を受け取れる可能性も出てきます。

 

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社会的治癒が認められるための条件

社会的治癒は、どんなケースでも認められるわけではありません。過去の判例などから、次のような点がポイントになるとされています。

  • 治療の必要がない状態だったこと:症状が落ち着き、通院・服薬をしていなかった(または経過観察・予防的な投薬のみだった)
  • 社会復帰して普通に生活できていたこと:働いていた、日常生活を問題なく送れていた
  • その状態が相当期間続いたこと:傷病にもよりますが、おおむね5年程度が一つの目安とされます(厳密に5年と決まっているわけではありません)

特に大切なのが、「その期間、症状がなく普通に生活できていた」ことを客観的な資料で証明できるかという点です。当時の就労状況がわかる資料などが重要になります。

 

【正直にお伝えします】社会的治癒のハードルは高めです

ここは正直にお伝えしておきます。社会的治癒の主張は、決して簡単ではありません。

法律上の明確な基準がなく、個別の事情によって判断されるため、最初の請求(裁定請求)の段階では認められにくく、審査請求・再審査請求で争うことになるケースも多いのが実情です。

だからこそ、社会的治癒を主張するかどうかは、メリットとリスクを慎重に見極める必要があります。

  • 本当に社会的治癒を主張すべきケースなのか
  • 当時の状況を証明できる資料が集められるか
  • 主張せずに別の方法で請求したほうが確実ではないか

こうした判断には、専門的な知識と経験が欠かせません。ここは、まさに障害年金を専門とする社労士の力が最も活きる場面です。

 

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まとめ

  • 社会的治癒とは、症状が治まり社会生活を送れた期間があれば、前後の病気を切り離して扱う考え方
  • 認められると初診日を”リセット”でき、納付要件クリア・障害厚生年金の請求・遡及請求につながることがある
  • 目安は「治療不要」「社会復帰」「相当期間(おおむね5年程度)」の3点
  • ただしハードルは高く、審査請求まで争うことも。慎重な見極めが必要

「昔の初診日であきらめていたけれど、もしかして…」という方は、一度ご相談ください。社会的治癒が主張できるケースかどうか、当時の状況を丁寧に伺ったうえで判断いたします。

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